新たなワークスタイルの確立したい
探究心旺盛の電照菊農家の挑戦
恩納村
外間 貴光さん
電照菊農家
外間 貴光さん
電照菊農家
2020.06.25
電照菊発祥の地といわれる恩納村に3代続く農家がある。外間貴光さんは祖父から父を経て、その農家を継ぎ、電照菊栽培に精を出しています。今回は農業の未来と真摯に向き合い、前向きに挑戦し続ける外間さんを取材しました。
祖父の時代から農業を始めており、当時はサトウキビやカボチャなどを栽培して生計をたてていました。電照菊を始めたのは沖縄でもこの地域が初めてで、地域全体ではじめたそうです。祖父から父を経て現在では私が電照菊の栽培を継承しました。菊以外にもリアトリス、グラシオス、ゆりなど季節ごとの花も栽培しています。
幼い頃は農家を継ぐなんで考えてもいませんでした。家が農家なので手伝いもしていましたし、父や祖父が農場の手入れで忙しくしていた環境でも育ちました。それでも友人や時代の流れにのって沖縄県内の大学を卒業して、県内企業でサラリーマンをしていました。一方ではいつかは継がないといけないのだろうという想いは心の奥に常にあったと思います。
農家を継ごうと考え始めたのは、父が60歳になった時です。姉の後押しもあったのですが、父が元気なうちに農業を教わろうと考えて前職を退職し、農家としての生活を始めました。当初は新規就農事業として沖縄県の補助を受けながら日々農業に打ち込んでいました。
日々の手入れでとにかくこだわっているのは土づくりです。土の状態の良い状態を保っていると作物のロス率が低くなり、枯れることも少なくなります。堆肥を入れて菌を成長させて、その菌が土の状態をよくしてくれます。乳酸菌も良い菌の1つで、ヨーグルトを土に入れて土づくりを試している農家もあります。
害虫での被害では全部枯れることはないのですが、土による被害は作物全体が枯れる可能性があるので、土づくりに関しては特に意識して日々手入れをしています。情報収集に関して農家仲間どうしで意見交換したり、本土に研修に行ったりして積極的に行っています。
菊は夜に花が咲くので、その成長を止めるために電照します。電照することで葉や茎は成長させて、出荷させるときに電照をとめて花を咲かせます。電照菊は3〜4ヶ月で出荷するサイクルなので1年の中でも色々と試すことができます。例えば、電気量を色々試して成長の度合いを試したり、電照を消すタイミングなども1度消してみて数日後にまた電照してどうなるかなど、試して、検証して、考えてまた試してという様々な育て方などを追求しています。どうやったら効率が良くなるか、その都度挑戦しています。そうやって挑戦して、追求した後に成果が出た時の達成感は格別です。少しだけ未来が開けたように感じます。
その他にも苗を植えるのもこれまでは人が植えていたのですが、野菜の種を植える機械を試したり人に頼らない栽培方法も試しています。まだうまくいってはいなくて、たまに周りからは冷ややかな目で見られることもあります(笑)。それでも機械を業務として取り入れることはできるようにしたいと思っています。人の力だけに任せていては農家としての未来は持たないのではないかという危機感があります。人材の確保がこれからも厳しい時代になると感じるので、日々の業務内容も働き方も含めて、未来を見据えた農家としてのワークスタイルも追求しているところです。
農家という職業は自分で考えて行動に移しやすい、挑戦しやすい職業かなと思います。探究心を持った人にはとても向いていると思います。自分で考えたことが結果として作物の成長にあらわれるので自分でやっているという実感があり、とてもやりがいのある職業だと思います。挑戦できる土台を作ってくれた祖父や両親に何よりお感謝しています。私自身農家として楽しんで生活できています。
これからは菊栽培以外にも色々な植物にも挑戦していきたいです。手売りできるような作物の栽培にも幅を広げてみたい。
農家の未来を想い描き、様々な挑戦をしている外間さん。農家として、経営者として課題に向き合い、問題解決に取り組む話はとても興味深く、いつの日か農家のワークスタイルが楽しくなると期待してしまう楽しい取材となりました。