体に優しい野菜を作りたい!
農家として、一歩一歩成長する日々
沖縄市
仲村 美紀さん
仲村ファーム
仲村 美紀さん
仲村ファーム
2021.03.10
沖縄市大里に地域から愛されるトマト農場があります。地元沖縄市を中心に遠くは宜野湾市からも訪れるほど、甘いトマトが人気。そこで代々続く農家を営んでいるのが仲村ファームの仲村美紀さん。父から仲村ファームを継いで5年目、まだまだ駆け出しの仲村さんに農業と向き合う日々を取材しました。
「何より虫が嫌い。農家になるなんて思ってもいませんでした。」
仲村ファームは曽祖父からはじまりました。幼い頃から虫が嫌いで女の私が農家に関わるなんて考えたこともありませんでした。父が日々農場の手入れに奮闘しているのも見ていましたし、暑いし虫もいるので良いイメージもありませんでした。一方で日曜日などの休日には、忙しい父のお手伝いをしていたこともあり、農業に関わることが生活の一部にもなっていました。父は毎日休まず働くだけではなくて、家族や親戚のことを気遣うとても優しい人でした。
私も結婚し子育て中心の生活になってからは、父の手伝いなどは全くしなくなりました。子育てに向き合えるように、時間の融通がきくアルバイトをしながら子どもたちと楽しく生活していました。そして、子どもたちも大きくなり、手が掛からなくなってこれからの人生をどう過ごそうか考え始めた矢先に父が他界しました。父は二人姉妹だった私達には農家を継いでもらおうと考えてはいませんでした。それで「農場を継ごうかな?」と考えていることを家族や親戚に伝えたところ、「その方がお父さんも喜ぶし私たちもサポートするよ!」と叔母たちが背中を押してくれました。私自身農家を経営できるか不安もありましたが、叔母が手入れを協力してくれることもあって、代々続くこの農場を継ぐことを決めました。
そして農家としてスタートしました。幼い頃によく農場の手入れを手伝っていたこともあって、農場での作業はすんなりと携わることができました。一方では、前職が急に退職ができなかったので最初の1年は叔母たち中心に運営していきながら農業に携わりました。農業を営みながら生活できるイメージが持てたのは、幼い頃から農業に奮闘する父を見ていたことと、親戚の叔母たちの協力があったからです。そういう日々を重ねるうちに私自身農家としてやらなきゃと強い思いが芽生えました。
幼い頃から農業に携わる父をとても尊敬していました。でも格好いいお父さんというよりは「なんでこんな辛い仕事しているのだろう?」という印象が強かったです。私自身農家として歩み始めて、そんな疑問への答えがわかる機会がすぐに訪れました。
「美味しい。こんなトマトあるんだ。」
「ありがとう。こっちのトマト食べたら他が食べられない」
初めて目の前で聞いた喜びの声に「お父さんが続けていた理由はこれかな。」と共感できたことは格別な想いでした。
手塩にかけて育てたトマトを食べておいしいと言ってくれる人がいる。美味しいと食べる人の笑顔が嬉しくて、その達成感や喜びは、猛暑の中で農場の手入れをする大変さを吹き飛ばしてくれました。
農家として歩み始めて4年経って、それでも、知識と経験はまだまだ足りなくて農薬や湿度管理など勉強しないといけないことだらけです。農薬については叔父に教えてもらい、日々の業務は叔母たちにサポートしてもらっています。まずはハウス内の温度管理などのデータを毎日取り始めて、私自身が振り返って知識、経験を積んでいます。トマトは育つ環境がとても大切なので、問題が起きた時にすぐに原因を突き止められるようにデータ収集と管理を徹底しています。
「学ぶことがとにかく多い。でも焦らずに1つ1つ」
学んだことを日々の手入れに試したり、研修会や農業女子会など様々な勉強会にも足を運んで、共に農業と向き合う仲間と意見交換したりして、知識や経験を深めているところです。
農家として歩み始めて4年経過した頃でしょうか、トマトを食べたお客さんから
「トマト嫌いなうちの息子がこっちのトマトを食べて、トマトが食べれるようになった」
と喜びの声をよく聞くことが増えました。また、私の娘も
「ママが育てた野菜は特別に美味しい」
と普段食べない野菜も喜んで食べてくれてました。自分で作った野菜が地域の皆さんの食卓に届き、そこで喜んでもらえたことを聞けるのは農家としてのエネルギーの源になっています。また、最近はデータ管理や勉強会で学んだことを実践し、日々の収穫にも成果として現れ始めています。農家としてステップアップしていると実感できることが増えてきました。特に糖度管理がうまくいって、とっても甘いトマトができた時は最高な気分です。
私自身農家としてのこれからは、トマト栽培を主体としながら、その他の野菜作りにも挑戦していきたいです。農家になってずっと取り組んでいる糖度の高いトマトを作り続けることは常に意識ししながらもその経験を野菜づくりにも活かしたいと思っています。
「今以上に、体に優しい野菜づくりができるようになりたい」
日々続けている勉強や研究をマイペースで続けていきながら、今以上に体に優しい農作物を作れるようになりたいです。ハウスの環境作りも土づくりも日々の業務で学んでいきながら、農薬の使用をできる限り少なくしたいです。
女性として、母として子育てに向き合いながら、祖父の代から続く農家を継いだ仲村さん。農家として日々学び、成長しながら、支えてくれる叔母たちと共に、明るく楽しく農業に向き合う姿がとても印象的でした。