二代目マンゴー農家の挑戦
あくなき探究心が未来を切り拓く
宮古島
上地 元氣さん
ユートピアファーム宮古島
上地 元氣さん
ユートピアファーム宮古島
2021.06.03
「ユートピアファーム宮古島」はマンゴー農園とフラワー園、フルーツ園があり、亜熱帯地方の雰囲気が堪能できる宮古島でも数少ないタイプの観光農園です。併設されるパーラーでは採れたてのマンゴーでスィーツを提供しており、宮古島の特産品を積極的に活用している観光スポットとしても評価が高い。その「ユートピアファーム宮古島」の上地元氣さんを紹介します。上地さんは父である登さんが一代で築き上げたこの観光農園の後継ぎとして、マンゴー栽培を中心に日々研鑽しています。そんな上地元氣さんのこれまでの歩みと農家としての将来の夢を聞いてみました。
「農園は兄が継ぐと思っていました」
幼い頃から農業が隣り合わせにある生活環境でしたが、僕自身が三男という事もあって農家を継ぐなんて思っていませんでした。むしろ学生時代は全く別の夢があり、本土の専門学校に通っていたんです。その学生生活を送っていた時にその夢で生きていく自分のイメージが湧かなかったので、中途半端に通い続けるよりはと退学しました。その時に父の紹介で大阪の中央卸売市場で働き始めました。
卸売市場での仕事が思った以上に楽しかった。そこでは毎日全国の農家から届いた農作物を売り手に届ける業務をしていました。そうやって農家が栽培した新鮮な農作物にふれていくうちに農業に対して興味を持つようになりました。当時農園を継ぐと思っていた兄も別の職業で生活しており、跡取りも特に決まっていませんでしたし、父からも後継者になるような話も特にはありませんでした。そして22歳になった頃、将来をじっくり考えた時に今一番興味のある農業を学べる環境が実家にあるなら、覚悟決めて1から学ぼうと思いました。父の後を継いで、農業を商いとし生計をたてようと覚悟を決めて宮古島に戻りました。
実際にマンゴー栽培に携わって驚いたことがあります。それはマンゴー栽培自体の歴史が浅くて、農家によっても栽培方法が様々だということです。専門書も色々と探してみたのですが、他の農作物と比べても情報が少なくて、何よりも毎年栽培したプロセスや結果が学びになる事を知りました。マンゴーは一年に一度しか収穫できない農作物なので、簡単に失敗はできないないと思いました。僕自身、後継者としてもまだまだ経験の浅いので、日々の手入れを通してマンゴー栽培を必死に学んでいました。
父の存在も大きかったです。マンゴー栽培を始めて、宮古島でも有数なマンゴー農家に成長させていますが、何といってもその探究心と挑戦する行動力は見習うべきものがあります。マンゴー農園だけではなく父が好きなブーゲンビリアを始めとする亜熱帯の植物をフラワー園にして観光スポットにしたことや、パーラーを併設させて採れたてのマンゴーでスィーツを提供し、観光客が足を運べるように経営展開したことはすごいことだと思います。マンゴー栽培に関する知識や経験も豊富で、まだまだ父の背中は遠いです(笑)
「マンゴー栽培は一つ一つの過程がとても大切」
マンゴーの実は花が咲かないとできないので、花を咲かせるためには受粉が必要です。その受粉させるには蜂が動く環境づくりが必要になります。このように、一つ一つの過程がしっかりと起きるように毎日ハウスの環境を確認していくのが日常業務になっています。
各過程において気をつける事が違います。その年の天候状況によっても施す対策も違ってきます。近年は温暖化が原因と推測しているのですが、日差しやハウス内の温度管理も数年前とは考え方も変わってきています。毎年変わる気候状況、南国特有の湿度の変化など、栽培に関わる全ての状況を把握し、その時々で最適な対策を選定する知識と経験が必要となってきます。時には新しい栽培方法にも挑戦して、経験を積んでいます。
「もっと色を出したい、味を良くしたい」
「味のばらつきのないマンゴーにしたい」
マンゴー栽培の勉強ができるようにと、小さいながらも農場とは別にハウスを建設し、色々な栽培方法を試しています。農業は実践から学ぶ事が多いので、毎回新たな気づきや学びがあって楽しいです。美味しいマンゴーができても、なぜか完全に満足はできません(笑)
父から跡を継ぎ、思い描く未来には多くの課題が山積している。昨今の新型コロナ感染拡大における社会情勢の変化に対応できる経営力もつけなければいけない。また、農家人口の減少において働き手をどのように確保していくかなど、農家としてのスキルを高めるだけでなく従業員を雇用する経営者としての能力も研鑽していかなければいけない。
「プレッシャーはあります。でも日々の勉強の積み重ねが何よりも大切」
「もっと良いマンゴーできたのではないか。次はもっとこうしたい」
美味しいマンゴーを生産する事ができても、達成感より探究心の方が強い。まだまだ農家としては駆け出しの身。足元を固めるべく、マンゴー栽培の一つ一つの過程を大切に、まずはどんな天候、社会情勢でも安定した美味しさ、出荷量を保つ事ができる農家へと成長したいという想いが強い。
「まずは農家としての能力を高めて、農業を通して宮古島のブランドをさらに高めたい。」
「宮古島の未来に貢献できる農家として成長したい」
未来を見据え、今できることから取り組む上地さんの姿に、二代目農家としての責任感を感じた取材でした。